『ゆとりの家』建前一日目。。

 

いよいよ『ゆとりの家』も待ちに待った建前です
建て主さんにとってはとても長かった道のりのよう。。
私達のところにやってくる前には数件の設計事務所を渡り歩いてきたけれど、そこでは常に「これでいいのだろうか」という疑問の日々だったそうです。
でも私たちのやっている『昔ながらの家づくり』に出遭ってから「良い家ができる!という実感にワクワクする毎日だった」との事。設計から木材乾燥のここまでで二年がかり。でもその確信は今でも変わらないと、ずっと言われているのが印象的です。。

いよいよ目にみえて形になっていく建前の日。きっと想いは私が想像するよりはるかに深いんだろうな だから私にとっても建前はもっとも大事にしたい日なのです。
建て主さんよりご挨拶をしていただき、建前がスタートされました。

足元から柱や土台にしっかりと差して組んでいく造りが昔ながらの木の家。
『昔ながらの家』は本来、石の上に柱が載って想定外の地震の揺れに対して石の上で動くことのできる遊びのある造りなのだけど、今回は基礎につなぐ方式。そのため差す事や組んでいく事がいつも以上に容易ではなくなるので難易度大に!
それは足元のみならず全てが組まれていく造りであるからこそ。基礎に頼って、土台にちょこんと乗っているような今の家とは、まったく様子が違います。
基礎がなくなっても十分に持たせる、建物のフレーム自体でもたせる造りだから。。
こう言っても、よく分からないだろうけど

ひとまずどうこう言うより感じるが早し!
本当にしっかりとした造りとは、どうこう理論で言うより、言葉以上の空気を放っているものだから。建築に精通していなくても十分に一般の方々にもそれは感じとることができます。
でもやっぱりアンカーボルトは邪魔だな~・・
フレーム自体を浮かして建前をしなければいけないのでね。

迫力そのものです!
ホゾの凸凹がかみ合わさってミシミシといった粘り強い音をたてます。これがユルユルだと後々まで影響して、ユルユルの家になります。大工さんたちが刻む仕口一つの出来が家の丈夫さにつながる事を、案外多くの人は知りません。刻みは、簡単な仕事と、そうでない仕事があります。刻み一つであきらかに家の強さが異なります。
そしてしっかりとした刻みがされた仕事では、ひとたびホゾがかみ合った状態を目の前で体感すると、不思議なほどの安心感がわいてきます。現代的な造りでは感じられなかったこと。
ホゾも長いから建前は難易度を極めます。でもそれがかみ合わされば「もう大丈夫!」といった絶対的な空気感があります。金物をちょこんと留めるのとは訳が違いますね。

見ていて気持ちがいいし、美しい。。
神様が設計した花々や草木や自然の造形が美しいのと同じように、意味があるからこそ放つ美しさがそこには感じられます。。


だから『昔ながらの家づくり』がやめられなくなった私たち。
もう現代工法には引き返せない私たちがそこに
体感して本物が放つ素晴らしさを知ってしまったからこそ。


梁は幾重にも組まれていきます。時にはとても入りにくい部分もあり、柱を広げたり木のめり込みも活かしながら入れていきます。入りにくいという事は同時に抜けにくく。ひとたび納まった梁はビクともしません。動くことも抜ける事も容易ではなく、建物の粘りになっていることが感じられるのです。
粘らせるためには、局部的に力がかからないように全体で組ん持たせる配慮が不可欠です。昔ながらの『総持ち』の思想です。局部的だと柱に力が集中して傷めたりしますから、力が分散し、全体で粘らせるというバランス感覚が重要かと。。
ある大工さんが「ウルトラマンが放り投げたって転がる家やな」といったのが、この思想を感覚的にあらわした言葉やなと思いました

転げるぐらい全体で持っていないとアカンという事です。一部の差し口に無理がいくようでは、そうなりませんしね。
広げつつ締めつつ。そうやって梁を納めていきます。梁を重ねていくうちに床の水平構面が固まっていくのがあきらかに分かります。
昔ながらの家づくりの建前を何度となく経験していくと、「やっぱり昔の家は壁や床でもたせていないな~」と痛感します。もうこの木組みのフレームだけで十分に家が持ちうることが理解できるからです。

ん~
気がつくと、ご自身でも気がつかないほど建て主さんがニコニコと笑みをたずさえて組まれていく一瞬一瞬の架構の様子を眺められていました。
そうなんだよな、自然と出てくる笑み。しっかりと丈夫になっていっているというのが実感で感じられると、不思議に笑みが出てくるんです
ニコニコと嬉しくなってくるんですよね。これが専門的知識がなくとも本物は誰にでもわかるという証でもあります

さあ、2階床組みがおおよそ出来上がったところで、建前1日目終了です。。

まだまだかかりそう。。

関連記事

PAGE TOP