イ草農家訪問

 

今回『小さな本物の家』に使う畳表のことを知ってほしくて、建て主さんと、スタッフと一緒に、イ草農家さんを訪ねて、高知県へ行ってきました。

イ草農家さんを繋いで下さったのは、じゃぱかるの合田さん。
3年前に、野の草設計室の完成見学会の時に畳表のお話をしていただいた方。

野村和仁さんの畳表を使うのは2軒目。まだまだ、年数が経ってみないと本領は発揮しないでしょうが、普通に使っていれば、30年くらいは平気で使える畳表だと思います。

僕も畳表を少しは触っていたのですが、強くて、美しい畳表の品種の代名詞としてよく出てくる品種に『せとなみ』という品種があるのですが、その品種で織られた手織りの畳表が3年で穴が開いたんです。これは、僕にとっては本当にショックで、その時は本当に、もう畳は使えないって思ったんです。

今回、野村和仁さんも仰っていられますが、イ草の芯にしっかり実が入っていること、表皮の肉厚があり、草自体の粘りもありつつ、堅い表皮になっていること。これは、品種だけの問題ではなく、天候も影響あるとは思いますが、農家さんの栽培の仕方というか、どんなイ草を育てたいのか?ということなんじゃないのかなと思うようになり、どこに、そんな生産者さんがいるのだろうと、悶々と過ごしていたある日、大工さんのネットへの投稿で、しかも高知で(お隣の県)、気になるイ草農家さんの情報が流れてきたんです。それが、野村和仁さんだったのです。

ここのイ草農家さんは、おじいさんの代から変わらない想いをもって、畳表を作られているんです。
本当にいい畳表ってどんな畳表なのかの信念をもって。

野村さん自身はお客さんに自分たちの想いも一緒に伝えてほしくて、問屋さんに卸しているのに、問屋さんとしては、こんな畳表があることを知られると、今主流の畳表は売れなくなるかもという不安から、土佐表ということすら隠されていた事が判明してから、もう問屋に卸すのをやめよう、自分の畳表は自分で売ろうという、ネット全盛期ではない時代からコツコツと歩んでこられた経緯があって今があるようです。野村和仁さんの畳表は誰が生産したかちゃんと名前が入っていると思います。

よく言われるそうです。業界の人から
『そんな畳表を作っていたら仕事がなくなると。』

いいとは解っているのに、他の農家さんが野村さんの栽培されている品種をなぜ、育てないのか?
それは、今の品種改良されてたイ草と比べると、つくりにくい、難しいというのがあるそうです。
じゃあ、野村さんはなぜ、つくりにくい品種を栽培するのか?
そこには野村さんの想いがちゃんとあるということですよね。

今どきの畳屋さんのホームページには、普通に裏返しの時期として3年~5年。表替えが5年~10年みたいな記載があるんですが、一昔前の畳の交換のサイクルは20年~30年位が普通だったと思います。

おそらく、この野村和仁さんの上位グレードの畳表は30年で裏返し、50年で表替えくらいは使えるような気がします。今の時代にびっくりしませんか?その前に縁の種類によっては縁だけ先に交換というのがありそうですね。

これは、野村家の50年前の畳です。

良い畳表は、耐久性だけではなく、芯がしっかり詰まったイ草でしっかりと打ち込まれた表は、山と谷がはっきりとして、その山と谷の段差が大きければ大きいほど、肌との接触面が少なく、夏の暑い時期でもさらっとした肌触りになるし、表自体の厚みも厚くなり、弾力性もでて、藁床と組合わすと本当に体に優しい床材になるのです。
無垢の木で作られた家や家具が大切に扱えば、月日が経てば経つほど、味わいが出てくるのと同じように、この在来種の品種は使い込めば使い込むほど、黄金色に変わり、飴色の艶が出てくるともいわれています。

畳にはグレードがあって、そのイ草の種類だけではなく、経糸の種類によってもこの肌触りは全然変わってきます。
経糸が太くてしっかりすれば、する程、イ草をしっかりと打ち込めます。経糸が細くて、イ草の本数が少ない表は、
この山と谷があまりなく、肌触りがべたっとする感じがありますし、建材床でスタイロフォームにパーティクルボードのような組み合わせにこの細い経糸の畳を組合すと、弾力性のないべたっとした肌触りの畳になります。そして、パーティクルボードは堅いので、畳といえども板の上にじかに座っている位の感じが僕にはします。中国産でこの組み合わせだと、確かに費用的には安くなります。

物によっては数十年使えて肌触りが良くって、30年~50年使えてのトータルの費用で見れば、安くて使い心地がいいということになりませんか?僕にとってはこの畳のグレードを下げるというのは、すごくもったいないと思うのです。

なので、今回購入してきたのはイ草の品種は『岡山3号』ランクは麻麻W仕様(麻糸4本)になります。(ランクとしては一番上)

耐久性ももちろんですが、使い込まれた時の美しさ、肌触り、弾力性どの項目においても一番いいとされる表が、やはりいいと思います。

余談ですが、野の草設計室がいつもお願いしている畳屋さんからも、野村和仁さんの畳表が手に入らないと連絡がありましたが、今は畳屋さんが普通に仕入れる問屋さんには卸してないそうなので、もし、使ってみたいという方がいましたら『じゃぱかる』さんに問い合わせをしてくださいね。

それと、野村和仁さんの畳表に限らず、耐久性のある畳表を選ぼうとするならば、普段からそういう畳表を選んでいる畳職人さんにお願いしないと、しばらくして不具合が起きることもあったそうです。

耐久性のある畳表が欲しい方にとっては、野村和仁さんの畳表は本当にお薦めです。熊本県でさえ、イ草農家さんは激減しているこのご時世に息子さんも後を継がれていますので、本当にこれから残ってほしい畳表の生産者さんですね。

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