母なる大地の荒壁塗り。。

 

 『ゆとりの家』に荒壁土がはいってきました。やっぱり独特な匂いが漂います
藁が発酵した独特の匂い。藁が完全に分解され髪の毛のような繊維になるまで寝かせた熟成荒壁土でもある証拠です。ほら、無数の藁の繊維があるでしょ

これが土と土をしっかりとつなげて割れのこない壁にしていくのです。熟成させてまでの壁土は一般的にはあまり使われていません。でもこの荒壁が雨にも強く丈夫なのです。
熟成荒壁土のにおいは嗅ぎなれない、まるで豚糞のような匂いなので、工事前にはご近所にご挨拶をしています。でもまたあらためてご挨拶に。街中だと特に密集しているので、窓をあけて暮らされている人は匂いが気になります。時にクレームもあるみたいで関係者もそこは神経をつかいます。
でも吹付工事のように有機溶剤などの体に悪い化学物質をつかっている訳でもないのです。だから私は胸を張って「体に害のあるものではないです。田圃の泥の匂いです。」ということでお話をしています。
ただなかなか街中では土のにおいを嗅ぐこともなくなっている昨今、匂いそのものへの違和感があるようです。街中に行けば行くほど『お互い様』の意識も薄いので、難しく感じることも時にはありますね
でも建て主さんがご近所との付き合いをうまくやってくれていればいるほど家づくりとご近所関係も上手くいきますね やっぱりここが何事も大事

hahaha、やっぱり見た目はウ○コのようです 失礼。。
この芳しい荒壁土を使って『表塗り』をします。まずはヨコ間渡し竹のある面を表として、こちらから塗りはじめると相場が決まっています。それはヨコ間渡し竹のある面は、その後に『貫伏せ』をおこなったりと2工程となるからでもあり、『表塗り』『裏返し』『貫伏せ』の基本3工程で荒壁が出来あがります。

『表塗り』がされて、貫だけが見えている様子。
3工程目の『貫伏せ』で貫が隠されることになりますが、貫があるために荒壁に割れが入りやすいのが表面でもあります。だから外部に絡む裏面は、貫の外側にタテ間渡し竹をもってくるのが鉄則となり、貫部分の割れから雨漏りがしないための左官の智恵のひとつと言えます。う~ん、ここにもより良い家づくりのための智恵が 家づくりすべてが智恵のかたまりだと言えるが、昔ながらの家づくり。ひとつひとつが幾世代もかけて試行錯誤のうえで磨き育まれてきた意味ある職人たちの仕事なのです
ここに惹かれて私たちの家づくりが昔ながらの家づくりに方向転換してきたのでもあります。


これが裏面。壁土がクグニュっと出て、竹小舞に食い付いています。
これで乾けばそう簡単には外れないはずです。そしてこのグニュっとはみ出した壁土に次回は『裏返し』のための壁土が食い付くようになるのです。

それにしても荒壁が塗られてくると、急に落ち着いて家らしくなってきます。
竹の凛とした空間から、柔らかく優しく包み込む空間に変わってきます。
不思議、、母なる大地の土のもつ力。。
それを感じます。

今までの時代は目に見えるもの(理論的なもの)に評価をおいてきた時代でした。見た目とか、デザインとか、数字とか。でもこれからの時代は目に見えないものに評価をおく時代にはいってきたことを強く感じます。時代が変わってきています。目に見えないところ、感じるところが評価される時代。

もちろんそのために人々も、目から入ってくる情報だけでなく、五感をつかって物事を評価していくことが問われていきます。目からはいった情報を頭で考えるというより、五感を使って自らのなかから沸いてくる感覚で判断するということ。
原発問題も然り。どうこう頭や理論で考えるより、「気持ちわるい。安らげない。なんか気持ち悪くてイヤや~。」という生き物本来がもっているアンテナの方が正しい判断ができるのです。
理論で積み上げるのは限界があります。言語にするのにも限界が。感覚は、理論や言葉では表現しきれないほど高度で繊細だからです。この高度な能力を、言語や理論で説明できないからと切り捨ててはいけません。高度なゆえに我々の理解が追いついていないだけなのですから

家づくりも同じ。
アレコレと頭で考えるとキリがないことが山ほど出てきます。また目で見える情報など、本来の情報の数%程度しかないのです。本当はもっと生き物として「安心できるの?安らげるの?落ち着けるの?心地いいの?気持ちいいの?優しいの?」(・・・やっぱりここでも言語にすると限界があります)を感じることです!
大地の土がもつ力は、不思議な安堵感があります。そして包み込まれるような優しさとお母さんのような柔らかさを感じます。生き物として、土に育まれ、そして還っていく場所でもありますから、何か絶対的な安心感があるんですよね~。
ぜひ土壁の住まい、目で見るのではなく、感じてみてください
ちなみに木には男性的なエネルギーを感じます。力強く雄々しい。守る力を。
いつも住まいには、母なる大地の女性のエネルギーと、木組みの力強い男性のエネルギーによって出来上がっているんだな~と感じるところです。この二つのエネルギーが合わさって初めて住まいとなるんです。スゴイでしょ

五感は使っていくことで敏感になります。生き物として本来備わっている能力でもありますから。
ただし現代は頭や目ばかりを使っているので、そちらばかりに気をとられているのは間違いないですね。

さてこれでしばらく荒壁は乾燥です。風通しよくして、次回の『裏返し』まで2週間ほど小休止です

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