設計事例

『土間と風の家』

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【サステナブル建築物気候風土適応型住宅】
国交省先導モデル採択物件
伝統構法+分離発注方式
設計:橋詰飛香
施工:野の草設計室
大工:家守屋
左官:矢野左官

完成:2019年2月17日

『土間と風の家』は、ご縁あって季節折々の石手川の風景をのぞむ立地と出会った若いご夫妻が、小さな頃の思い出の原風景を、昔ながらの伝統構法に重ねて建てた住まいです。
日本文化や古い物を大切にしていきたいと願っての家づくりです。
地域の特性を把握し、伝統的構法の継承に配慮しつつ、サステナブルな社会の形成にむけ省エネルギー等の環境負荷低減効果が高い水準で期待される先導的なモデルであるとして、国土交通省の【サステナブル建築物気候風土適応型先導物件】としても採択されました。
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玄関土間のある住まいは、小さな頃の祖父母の家の原風景です。
屋外と屋内の中間的な位置として家の中枢をになった機能的な土間には台所もあり、食事をしたり接客をしたり、庭しごとの一休みにお茶をしたりと、一日の大半の時間を過ごす場所。
河川の風を招きいれれば夏はとても過ごしやすい三和土の土間は、昔ながらの知恵の空間。そして冬は薪ストーブで煮炊をしたり火を囲みながら過ごす。寒い冬だって火があると不思議と楽しくなります。暑い寒いも自然の心地よさを取り入れて暮らす住まいです。

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勝手口からそのまま外に出られるのは土間台所の良いところ。屋外に用意された洗い場で野菜の土や魚のウロコを落としたりと、炊事場との連携プレーがちょうど良い具合です。
長い軒庇が雨のときもそれを支えます。こんなところも実は昔ながらの知恵と使い勝手。
便利につくられすぎたお台所は、長く使っていくうえで縛られすぎて案外使いづらいもの。『土間と風の家』は作りすぎないシンプルな男のお台所です。自由であり機能的であり、それが使いやすくカッコイイです。
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今時珍しい、ふた間つづきの座敷がある居間。
こちらは土間とちがって、ゆったりと畳のうえに腰をおろしたり寝転がって寛ぐ、日常づかいの畳の間です。たまにの畳での食卓は気分もまた違ってやっぱりよいもの。大勢の友人を招いたり宿泊にも、臨機応変に対応できるこの二間が役にたっているそうで、友人たちを招くのが楽しみだとか。
すっかり畳の心地よさを知ってしまい、ベッドルームではなく今は家族みんなで奥の間にお布団を敷いて川の字で寝ているそうです。
写真:職人さんを集めての完成慰労会の様子
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この家でもっとも石手川を一望できる部屋が2階多目的スペースです。奥様一番の希望の空間であって、この住まいのセカンドリビング+子供室となっています。
大きな梁組でおおらかに包み込まれた空間は、どんな造りよりも飽きがこず。大工さんが手掛けた槍鉋(やりがんな)の手跡をずっと眺めていたいぐらいです。
大きな窓は全開でき多層構成の建具となっており、障子や格子をその時々の気分にあわせ開閉。室内を快適に保つように温熱調整の役割を果すようになっています。
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家づくりの当初は寒くないかとても心配だった奥様。でも自然の素材や職人さんの技術にふれたりして色々と見ていくなかで、性能を重視した家よりも「自然とともに呼吸して、大地の移り変わりが感じられる家がいいな」と大きく価値観が変わったそうです。
「毎日がとても心地よくって、この家を建てて本当に良かったねといつも主人と話ています。」っとお伺いするたびに嬉しい感想。
暖かさに期待薄も・・「土壁なので、低断熱、だけど、土が暖炉の暖かさを保ってくれるので、冬でもとっても暖かい!暖炉の火が消えて数時間しても、家の中はしっとりあったかくてびっくりしました。」と、土壁特有のなんとも言えないほんわりと心地よい暖かさを語ってくださいました。
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野の草さん、職人さんに感謝しきりです。
技術をもった職人さんは、今は減っていっているそうです。こんなに美しく心地いい技術が減っていっている現実をしって、とてもショックを受け、そして危機感を感じました。
木材や土等、その土地のものを使って、その土地の風土を知り尽くしたその土地の職人さんが伝統を受け継いでいく。そんな当たり前だったはずの、素晴らしい技を持った職人さんが、これからたくさん増えていってほしいです。
             (施主)
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