設計事例

『CSはうす H邸』

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化学物質過敏症者住宅
伝統構法+分離発注方式+セルフビルド
設計:橋詰飛香
施工:野の草設計室+施主
大工:小林建工

完成:2015年10月19日

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化学物質過敏症(中度)者の家づくりです。
当初は一時的な避難小屋として計画していたのが、終の棲家となりました。
Hさんは幸いにも、自然素材(木)に関しては許容性があり、木や土などの素材をよく吟味した上で建材(ボードや合板や塗料や接着剤、セメント等々)を使わない、昔ながらの方法で家をつくることにしました。
工事期間は長く掛かる家ですが、それがかえって素材に残存する自然の揮発物さえも抜いてくれるため、CSには理にかなっていた様です。
【住宅の概要】
・木と土でできた昔ながらの伝統構法の家。
・構造材には「杉」を使用。無塗装。
・壁材には安全を確認した「土」と無農薬の「藁」を使った土壁。(しばらくは仕上げは施さずに荒壁のままの壁仕上)
・一部壁材には「杉板」を使用。無塗装。
・天井には「杉板」を使用。無塗装。
・床材には「松板」を使用。無塗装。
・外壁には「杉板」を使用。無塗装。
・土壁の工期が長いため構造材・天井材などの木材は10ヶ月の自然通風に晒されます。
・木材は全て自然乾燥。
・合板、接着剤、建材(石膏ボード)、コーキング、化学糊、防腐剤、防虫剤の類は一切不使用。
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・屋根は「瓦」を使用。ルーフィング不使用。
・外壁に防水用シートは使用していません。
・「オールステンレス」業務用キッチン使用。
・キッチン壁は「ステンレス板」を使用。
・浴槽は「ステンレス」で特注製作。
・トイレ便器は「バイオトイレ」を使用。
・断熱材は「木材チップ+荒壁土」を使用。
・水道配管は「ステンレス」を使用。
・水は「井水」利用。
・排水管は「塩ビ」を使用。
・窓は「アルミサッシ+木製建具」を使用。
・木材封止に無臭柿渋を使用。3回塗以上にて封止効果が出てきます。
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↑木製建具も接着剤を使わないので抜きホゾ加工となっています。些細なところに工夫が。

一般的な石膏ボードやサイディング等の建材類を一切使わない昔ながらの家づくりなので、素材がいたってシンプルです。木と土と石と草。
CSという病気そのものを生み出した諸悪の根源でもある工業製品やケミカル製品を出来る限り使いたくない。使わなくても家はつくることが出来ます。それが先人たちが残してくれた昔ながらの知恵でもあります。CSという病気もなかった時代のこと。

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完成時に、CSさん限定での見学会をおこないました。
個々に反応する物が異なるCSさんに体感して頂き多様な感想をお聞きし、今後の参考にさせて頂くことができました。
杉の苦手なCSさんがいましたが、不思議な事にマスクなしで長時間滞在することが出来き、木を多く使っているのに体が無反応であることに、ご本人がビックリされていました。
自然乾燥木材の利用や、建て方が昔ながらであるため10ヶ月間木材が自然通風に晒されたのも、木材の揮発物を抜く結果となった様です。
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CSの家であっても「心地よく住まう」というのは「安心して住まう」と同様に欠かせないものです。母なる大地の『土』がもつ力は偉大だと感じています。CS(重度)の方も土壁の家では身体がとても緩んで楽になると言われます。大地の『土』は生き物を育み癒す力がそこにあると感じるのです。
きっと目にみえない世界で多くの何かしらの恩恵を受けていると私は感じます。。

安心して暮らすことのできる家づくりの一つの一例として、CSの皆さんの家づくりの参考にして頂ければと思っています。
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